アトピー性皮膚炎について

こんなことで心配していませんか?

  • 塗ったら良くなるけど、すぐぶり返す…
  • いつまで続ければいいの?どうなったらやめていいの?
  • どのくらい塗ればいいの?塗り方は?
  • 「アトピーっぽいかも」って本当はどうなの?
  • ステロイド軟膏を長期間使うのは、副作用が心配…

アトピー性皮膚炎とは

アトピー性皮膚炎は、かゆみを伴う湿疹が長く続く病気です。診断の基準として、

  • かゆみのある湿疹が左右対称に出る
  • 6か月以上(1歳未満では2か月以上)続く

ことが挙げられます。
特に赤ちゃんの場合、治療しても2か月以上湿疹が続くときは、アトピー性皮膚炎としてしっかり治療を行うことが大切です。

診断と検査

アトピー性皮膚炎は診察で分かることが多いですが、必要に応じて血液検査を行うことがあります。

  • 血清IgE値
  • 好酸球数(白血球の一種。アレルギーがあると上昇します)
  • LDH値(炎症の程度の参考になります)
新しい指標:TARC

近年注目されているのが血清TARC(ターク)値です。

  • 皮膚の炎症の強さを短期間で鋭敏に反映します。
  • 症状が強いと高く、治療で改善すると低下します。
  • TARCを参考に、治療効果や方針の見直し、ご家族への説明に役立てることができます。

治療の基本

アトピー性皮膚炎の治療は、次の3本柱です。

  1. 薬による治療(炎症を抑える)
  2. スキンケア(清潔と保湿)
  3. 悪化因子の対策(環境や生活の工夫)

よくご相談いただくのが、
「薬を塗ると良くなるけれど、やめるとまた悪くなる。いつになったら治るんでしょうか?」
というお悩みです。

大切なのは、

  • 薬の種類や強さの選び方
  • どこにどれだけ塗るか
  • いつまで塗るか
  • どのように減らすか

です。

薬の種類・強さ

年齢ではなく、湿疹の重症度によってステロイドの強さを決めます。
「赤ちゃんだから強い薬は使えないのでは…」ではなく、適切な強さの薬を選ぶことが大切です。

どこに、どれだけ塗るか(重要!)

ステロイド外用薬の場合、効果をしっかり出すために、塗る量の目安として FTU(フィンガーチップユニット) という単位が使われます。
成人の人差し指の先端から第一関節まで出した量が約0.5gで、これを 1FTU と呼びます。1FTUで、大人の手のひら約2枚分の広さに塗ることができます。

赤ちゃん全身だと約10FTU、つまり5gのチューブを1本使い切るくらいが目安です。
「1回で1本全部使ってください」とお話しすると、よく「そんなに塗ったことないです!」と驚かれますが、これが正しい量なのです。

解熱剤を半分の量しか飲まなくて、熱は下がるでしょうか。抗菌薬を半分だけ使って効くでしょうか。
ステロイド軟膏も同じで、適切な量を使わないと正しい効果は得られません。私たちが適量をしっかりお伝えします。

いつまで塗るか
  • 見て:赤くない
  • 触って:ザラザラしない(つるつるしている)
  • 感じて:かゆみがない

この3つをすべて満たしたら、初めて塗るのをやめてもよいサインです。
どれか残っている場合は、まだ炎症があるので塗り続けましょう。

減らし方:プロアクティブ療法

アトピー性皮膚炎は慢性の炎症です。すぐに塗るのをやめると、すぐにぶり返してしまいます。
つるつるになったら、塗る回数を「朝夕 → 夕のみ → 1日おき → 2日おき」と徐々に減らしていきます。

「長い間ステロイド軟膏を使い続けても大丈夫?」と心配になるかもしれません。
最近では、プロトピック・コレクチム・モイゼルトといった、ステロイドではない新しい薬が開発され、1年間毎日塗っても大きな副作用がなかったことが試験で確認されています。
赤ちゃんでも、生後3か月から使える薬もあり、これらを組み合わせて治療を行っていきます。

毎日の入浴やシャワーで皮膚を清潔に保つことが大切です。
その後すぐに、保湿剤をたっぷり塗って皮膚のうるおいを守りましょう。
保湿は治療の一部と考えてください。

ダニ、ほこり、汗、ペット、食物など、湿疹を悪化させる要因は人によって異なります。
生活の中で、可能な範囲で取り除いたり、工夫していきましょう。

まとめ

アトピー性皮膚炎は長く付き合っていく病気ですが、正しく治療とスキンケアを続ければ、多くのお子さんは成長とともに良くなっていきます。
「薬を塗っては再発する」の繰り返しに見えても、正しい方法で続けることで、皮膚の状態は安定し、かゆみのない生活に近づけます。

私たちと一緒に、きれいなお肌を守っていきましょう。